エレカシの曲には「テレビ」がときどき小道具として出てきます。
『扉』に入っている“化ケモノ青年”。
とにかく
酒もってこい
エレファントカシマシ “化ケモノ青年” 詞/宮本浩次
と連呼してますが、
「父」の台詞の中に、
考えごとをしてるんだ/テレビを消しとくれ
(同上)
というフレーズがあり。
とにかく酒。テレビも電気も消して、調度品も本も新聞も捨ててくれ、という父。
で、最後に《月を見てたんだ》とつぶやく。
“おかみさん”に出てくる《おやじさん》を思い出します。おやじさんも月見て涙流してました。
次のテレビはまた違うイメージで、
“遁生”の
《働く妻の横顔に力のぬけた目を向ける/鳴るのはテレビの音ばかり……。》。
エレファントカシマシ “遁生” 詞/宮本浩次
テレビがあぶりだす、茫漠としたひたすら気だるい景色。
1stに入っている“BLUE DAYS”には、
テレビを見てると知らない間に/一人言を言ってる
エレファントカシマシ “BLUE DAYS” 詞/宮本浩次
という一節。
やっちゃってるなあ、これ。お笑い番組に普通に突っ込んでるとか。テレビあるある。
あるあるなんですけど、エレカシの手にかかると狂気をはらんでるというか。でも、日常なんてそんなもんか、とも思ったり。
“友達がいるのさ”は、
テレビづけおもちゃづけ/こんな感じで一日終わっちまうんだ
エレファントカシマシ “友達がいるのさ” 詞/宮本浩次
という、
これもとってもテレビあるあるで、
でも《づけ》という言い回しや《おもちゃ》と並んでいたりするところが、
なんていうんでしょう、いい意味で軽みがあるところが好きです。
個人的に、テレビづかいがすごいな~と思って
とても驚いたのが、“お前の夢を見た(ふられた男)”でした。
お前の夢を見た
ひまなる毎日
テレビをみてたら
お前の夢を見た
エレファントカシマシ “お前の夢を見た(ふられた男)” 詞/宮本浩次
これ……なんて言ったらいいのか、
《テレビ》と《お前の夢》の間に寝るとかの経過がないのがよくて、
テレビというのん気な日常から、一気に《お前の夢》という暗黒へ突き落とされる感じ。
あるいはテレビは気分をまぎらせるために見ていたものかも知れず、それなのに彼女が夢に出てきてしまった。
こんなこと、べらべらしゃべってほんとに無粋ですけど(いつもか)、
でも、こんな悲しいテレビは見たことがないと思いました。
テレビという日常の小道具に反射して映し出された感情は、
どれもヘビーだったけれど、
普段、フタをするように隠してる闇を突っついてさらけ出してしまうのがエレカシで。
そういうところがまたたまらんところでもあるのでした。