信藤三雄さんの写真展に行ってきました。
http://www.asahi.com/and_w/fashion/CGfashion108851.html
信藤さんのジャケットで好きなのは『ココロに花を』。思い入れも含め、エレカシのジャケットの中で一番好きです。
エレカシで今回展示されていたのは、
『昇れる太陽』のあのグラサン写真と、歌詞カードの中の4人で写っている写真、
それから『絆』のジャケット。
「エレカシは何と言ったらいいのだろうか…興味が尽きないバンドである。」
「この写真はカラーですがモノクロの、jeanloup sieffを意識して撮りました。」
写真の下に、信藤さんの一言コメントが入っていました。
「興味が尽きないバンド」……たしかに!
この写真はこう撮った、みたいなコメントが多かった中で、
バンド自体に言及する一言は珍しかったような気がします。
jeanloup sieff。初めて知りました。画像検索してみると、なるほど。かっこいい。
——
マンションで朝、出がけによく顔を合わせる、
ゴミ置場などを掃除したりする人がいるのだけれど、
最近、ちがう人に変わっていました。
以前は、愛想のない男の人でしたが、
今は明るいハツラツとした女の人がその仕事をしています。
近くを通ると、「行ってらっしゃい!」といつも元気よく声をかけてくれる。気持ちがいい。気持ちがいいのだけど、同時に、
前いた男の人はどうしてるかな?とふと、思い出したりする。
大柄な体は猫背で、陰気な空気を放ち、決して目を合わせようとはせず、
こちらが挨拶をしても、ぼそっと口ごもるようにつぶやく言葉は聞き取れなくて、
全然いい印象はないんだけど、なんとなく気になるというか…
別にこの話にオチはないんですけど、
朝のこんなひとコマから、芋づる式に、
宮本さんの「マンションの管理人さん」の話を思い出しました。
2009年リリースのアルバム『昇れる太陽』のプロモの頃、
マンションの管理人さんの話をよくしていました。
なりたい自分になれないというのは縄文時代から変わらなくて、
その中から活路を見出すのが大事、今回自分は「歌係」に徹することにそれを見出した、
という話から、マンションの管理人さんの話が引き合いに出されます。
宮本さんはこの管理人さんのことが大好きだったらしく、
ツアー先で買った明太子を持って行ったりもしていたそうです。
宮本浩次:62歳くらいのご夫婦だったんですけどね。こう、持ってくと『ありがとうございます』ってスッと受け取って。で、あとで『あの明太子おいしかった』とか感想言ってくれたりして。(中略)好きだったんですよ。その、たぶんいろんな苦労はあったと思うんだけど、12年間マンションの管理人をすごく精一杯やるっていうことのかっこよさっていうか…
この話は大好きですねえ。いい話だ。
宮本さん的「かっこよさのツボ」はここなんだな、ということがよくわかる。
この話だけじゃなく、walkerplusは本当にいいインタビューで、
当時も印刷して繰り返し読んだし、たまに読み返したりします。
このインタビューで好きな話はもう1つ、ヤナギマンとのエピソード。
音楽プロデューサーで、エレカシだと『俺たちの明日』や『絆』を手掛けた方ですね。
宮本:右脳だ左脳だ言いながら『俺たちの明日』を作ったんで、YANAGIさんはものすごく、苦労したんじゃないかと思うんです。(中略)それから年月が経って、今回すごく久しぶりに一緒に曲を作るんで、去年の夏にスタジオに挨拶に行ったの。7か月ぶりくらいの再会だったわけなんだけど、そしたら俺のこと見てすっごく、もう顔を高潮させて喜んでて。俺も久しぶりに会えてうれしくて。1年かけて何かが育ってたんですね、お互いに(笑)
『絆』で久々にヤナギマンと再会したときの話。
記事を全部読むとわかるんですけど、
最初はヤナギマンとも「右脳だ左脳だ言いながら」すったもんだがありつつ『俺たちの明日』を完成させ、
再び『絆』でタッグを組んだと。
「右脳だ左脳だ」の話が、宮本節炸裂で超面白いんですけど、でも、
この話本当によくって、
「何かが育ってたんですね」というのがなんともいい。
男同士特有のものという感じがして、女の私は、こういうつながりをすごくうらやましく思うのです。
いつも一緒にいるわけじゃないけど、やりとりしているわけじゃないけど、
久々に会って顔を高潮させて喜び合える。
すったもんだしてもモメても、そうやって真剣勝負で仕事を共にした仲だからこそ、ということなんだろうな。
久々に赤本を読んでいたら、古本屋の話が出てきました。
神保町の古書店で、太宰治の『晩年』がショーウィンドウに飾られていたので、
その値段を尋ねてみると、サイン入りだから150万円だと言われ、驚いたそうです。
「店の主人は“どうだ!!”と言わんばかりにニヤリと笑った。俺は絶句したまま再びその宝物みたいな太宰の初版本を眺めるのであった。
“本の街”神保町が、本好きの人々から愛され続けているのは、勿論そこが文字通り世界に類を見ない巨大な本屋街であることと同時に、このいかにも職人然とした古本屋の親爺たちに負う所も大きいように思う。彼らはそれを商品として扱っているとはいえ、我々と同じ本好きであり、特に専門分野の本に関しては、我々の良き先生でありさえするのだ。」宮本浩次『明日に向かって歩け!』P.241
「古本屋の親爺」という言葉に愛を感じます。
マンションの管理人さんみたいに、宮本さん的かっこよさの美学がよく出ている話だなあと思います。
『風に吹かれて-エレファントカシマシの軌跡』には、大学時代の恩師にまつわる話が出てきます。
大学生活は嫌でしょうがなかったけど、一人好きな先生がいた。
で、当時、髪がグシャグシャだった宮本青年は、その先生に「髪の乱れは心の乱れ」と言われ、
ある授業で機会があり、「外見で判断していいものか」という感じでその反論を書いて提出したところ、
すごく気に入られてしまったのだという。
「もともと俺はすごい好きだったんですけどね、何言われようがさ。ほとんど相手にされてませんでしたけど、だけど好きだったのね。だから、わかってくれそうだと思ってたんだろうね、最初から。そしたらね、ある時俺が大学の校舎歩いてたら、後ろから『宮本く~ん』っつって走って追いかけてきて。ま、それ1回だけだったんだけど、それで一緒に2人で並んで校舎に入ってったのが一番のいい思い出ですよね」
『風に吹かれて-エレファントカシマシの軌跡』P.250
この話も本当に大好きで、この本の中で一番好きかもしれない。
頭グシャグシャの青年と、「宮本く~ん」とかけて寄ってくる先生。その場の情景が浮かぶようです。
この先生は当時53歳くらい、
宮本さん、「ガンですぐ死にましたね」と本の中でさらっと言ってたけど、
逆にさらっと言うのがかえって切ない感じで。
「例えばね、『レコード作りました』っつって渡したら結構喜んでくれるような――『ああ、そうか。俺の生徒が出したか』っていうようなね」
――結構その人には「惚れる」みたいな感じだったんだ?
「うん。俺、だからそういう人が好きだからさ。男好きですよ、俺は。はっきり言って」『風に吹かれて-エレファントカシマシの軌跡』P.251
この話が妙に心に残るのはなんでなんでしょうかね。
「わかってくれそうだと思ってたんだろうね」ということに尽きるのかな。
男女の間柄に限らず、すべてのはじまりは「わかってくれそう」という気持ちのような気がする。
うまく思いが通じたり、すれ違うこともあったりいろいろですけど…
とにかく「宮本く~ん」のくだりは、本当に大好き。
うまい監督が撮ったらいいシーンになりますね。
今日は宮本さんが好きな男たち、という感じで
いろいろ思い出してみました。
宮本さんに限ったことではないけれど、
好きなことや人について語っている姿を見るのは気持ちがいいものだし、
自分自身はこうです、と直接語るよりも、
実は素直に自分のことをさらけ出しているものかもしれません。
シャイな人ならなおさらのこと。
エレカシは男に生まれ変わって聴いてみたい。
宮本さんが「男」を語る話を思い出しながら、そんなことも思いました。
エレカシの曲は性別世代を越えて聴き手を問わない、普遍的な曲が多いと思うけど、
でもやっぱり、男として生まれ、生活し働き傷つき悩み、
そんな中で聴いてみたい曲も数多くあるのです。
そして今日は、宮本浩次、ミヤジのお誕生日です。おめでとうございます!
男が惚れる男ランキングがあったら、この人もまた、
けっこう上位に食い込むのではないでしょうか!
男が男に惚れる、その思いというものは、
男が女に寄せるそれよりも、ややもすれば濃いものなんじゃなかろうか。(変な意味じゃなくて)
とにかく、今後もまた、男・宮本浩次の活躍を楽しみに待ちたいと思います。
今年はもう前半が終わってしまうので、後半の半年、
エレカシの情報追っかけるのもういっぱいいっぱい!無理!ぐらい、
日々楽しませてくれるといいなあと思います。
(何より、アルバムが待ち遠しい)
