森鴎外の『山椒大夫』の話をもう少し。しつこくてすみません。
ラストの、厨子王が母に再会するシーンで、
そのとき干した貝が水にほとびるように、両方の目に潤いが出た。
というように母の泣く姿が描かれていました。
ここがとても印象的で、でも、「ほとびる」という言葉がわからなくて、
ほとばしるみたいなこと? でも「貝が水にほとびる」だから違うなあ……と思って、
調べてみたら、
【潤びる(ほとびる)】水けを含んでふくれる。ふやける。
という意味でした。そうか。
じょ~と吹き出す涙じゃなくて、
年老いたお母さんの乾いた肌に沁み込むような涙。気持ち的なものも暗喩してるんでしょうか。
この「ほとびる」が気になってググってみたら、山口の方言らしいです。
山口は森鴎外の生まれた津和野にも隣接しているし……なるほどなるほど。
小説が書かれた当時はとくに方言じゃなかったかもしれないですけどね。
エレカシで方言といえば、
『風』に入っている“DJ in my life”。
んん かがみでもって おのれを見つめてみんさい
エレファントカシマシ “DJ in my life”
この≪みんさい≫が広島弁なのです。
広島だけじゃなく隣接する地域でも使われる語尾だと思いますけど、
広島出身の私はこれをはじめて聴いたとき、そら~驚きました。
広島弁だと、「~なさい」が「~んさい」となります。
来なさい→来んさい
しなさい→しんさい
みなさい→みんさい
なにゆえ広島弁。なにゆえ≪みんさい≫。
でも、この≪みんさい≫、あんまり深い意味はないんだろうな~。
この曲の詞は、頭からとにかく韻を踏んでいるので、そのひとつなのかなと。
デタラメな歌詞の仮歌のときから≪みんさい≫だったんじゃないかなーという気がしないでもない。
メロディそのものが自然と連れてくる言葉の響き。
そういうのをすごく大事にしてる感じ。
この曲に限らないし、エレカシにも限らないんでしょうけど。
そうは言っても“DJ in my life”の≪みんさい≫のインパクトはすごかった。
宮本さんの言語感覚、ほんとに自由だなと思います。
久しぶりにこの曲を繰り返し聴いたけど、やっぱり好きだな~
≪出てきて説明せい!!≫とか、自嘲気味の感じがまた重すぎなくていいし。
そしてあそこは≪みんさい≫以外の言葉はあてはまらない……もはや。
宮本浩次「”友達がいるのさ”とか”DJ in my life”も凄い好きな曲だし、”平成理想主義”も、凄いタイトルになってるんですけど、曲の段階では凄くいい曲だったんですよ!」
MUSICA 2008年5月号
と語っているとおり、先生もお気に入りの一曲のようです。
そういえば、はシングル『友達がいるのさ』のカップリングが“DJ in my life”でした。