エレカシが主題歌を担当するという「みなさん、さようなら」の話題から、「sweet memory」と「さらば青春」が聴きたくなり、「sweet memory~エレカシ青春セレクション~」を聴こうとiTunesのライブラリを見たのですが、「石橋たたいて八十年」と「始まりはいつも」の2曲(初回限定盤にのみ収録)しか入ってませんでした。
ベスト盤だからってすっとばしてしまったのか、私。
で、あらためてこのベスト盤を聴いてみました。
買った2000年当時、流して1、2回は聴いたような気がするのですが、
すっかり忘れてるのか初めて聴くような感じで、なんとなく新鮮でした。
「悲しみの果て」「風に吹かれて」「今宵の月のように」と、
しょっぱなからもったいぶらずエレカシの三大名曲が並びます。
何度も聴いている曲たちですが、こうやって続けて聴くと、なんとなくテンションが上がります。
続く「昔の侍」「さらば青春」の流れもいい。
「さらば青春」は詞ももちろんいいのですが、
曲、メロディそのものが「さらば青春」と言ってる気がします。
映画「みなさん、さようなら」の挿入歌だというこの曲。
どんなシーンでどんな入り方をするのか……楽しみです。
次は「四月の風」。これは、個人的には少し時間差があって好きになった曲。
このまま全てが叶うようなそんな気がしてた
(エレファントカシマシ「四月の風」)
ここが突然切なく聴こえてきたのです。
なんでしょうね、急にです。
サビではがんばろう、とか歌ってるしさわやかだし、明るい曲なんですけれど…
でも、きっとこのフレーズがあるからそのあとの
あ~明日もがんばろう
愛する人に 捧げよう
ああ 風が吹いた四月の
四月の風
(エレファントカシマシ「四月の風」)
というサビがリアルに輝いてくる気もします。
次の「孤独な旅人」では、PVの後半、セットの花の植え込みを蹴散らす先生の姿をちらっと思い出しつつ、
「真夏の星空は少しブルー」「月夜の散歩」へ。
このあたり、プライベート感が増すというか、登場人物少ない感じになって、
ぐっと雰囲気が出てくる流れです。
「遠い浜辺」「赤い薔薇」、また空気感の違った2曲が続きます。
「遠い浜辺」、すごい好きです、激渋で。ちょっとこのベスト盤に入っていたのが意外なぐらいでした。
涙なんぞ 流れたけれど…
(エレファントカシマシ 「遠い浜辺」)
の≪なんぞ≫がいいです。
最後の2曲、「sweet memory」「武蔵野」。
昨日も書いたけど「sweet memory」は甘いけど骨太、そのさじ加減がすばらしい。
「武蔵野」は説明不要の大名曲ですね。
このベスト盤、ロッキンオンの山崎さんがライナーノーツを書いていて、
このアルバム収録曲の時期には武蔵野のイメージが多いように思う。(中略)この時期のエレファントカシマシの歌が何十万人もの人に感動を与えたのは、宮本の頭の中に常に武蔵野の美しく優しい光景があり、それが歌を通じて聴く人の心に広がっていったからではないだろうか。この曲で宮本はそんな武蔵野に対する強い思い入れそのものを歌っている(山崎洋一郎)
「sweet memory~エレカシ青春セレクション~」ライナーノーツ
と寄せられています。
武蔵野の美しく優しい光景・・・ぐっときます。
確か、このベスト盤は、宮本さんが選んで曲順も考えたものだったと思います。
2000年の前半に全編打ち込みのアルバム「good morning」が出て、
同じ年の秋に「sweet memory~エレカシ青春セレクション~」が発売になりました。
このベスト盤が出たとき、宮本さんはプロモーションでテレビや雑誌に大量露出してて、
『good morning』とこのベスト盤と、両極端だけど、ひっくるめてエレカシなのだ、としきりに言ってました。
私はその頃、どちらかというと「good morning」モードだったので、
ベスト盤かあ、いろいろ事情があるんだろうなあ、という感じで、私はわりと冷めた感じだったのですが、
ひっくるめてエレカシ、というのは、今だったらすごくよくわかる。
エレカシの剛と柔。
MASTERPIECEツアーの、「七色の虹の橋」からの「世界伝統のマスター馬鹿」、「飛べない俺」から「我が祈り」への流れ。
ライヴのセットリストを見ても、その両極端、両方あってエレカシの真骨頂だなと思います。
「sweet memory~エレカシ青春セレクション~」、聴き直して感じたのは、
曲はもちろんのこと、詞がいいなあと。
エレカシ得意の古い言葉づかいもないし、難しい漢字とかほとんど使ってない、
平易な言葉だけで詩情と深みを出し、哲学さえ感じさせるのはすごいなと思いました。
そういう意味でも「悲しみの果て」は飛びぬけてるし、
「今宵の月のように」の≪くだらねえとつぶやいて≫から≪熱い涙≫への飛躍、
「武蔵野」の冒頭、≪俺は空気だけで感じるのさ≫の聴くたびに感じる鮮烈さ。
聴きやすいだけではない、このベスト盤の魅力をあらためて思い知らされたのでした。