ライブ関連

思い出すこと-旅の途中-(エレカシ、震災後のライブ)

今回のツアーは、東京と大阪の他に仙台にも行きました。

とても盛り上がって、いいライブだったんですけど、
中でも印象的だったのは、「旅の途中」が演奏されたことでした。




2011年の悪魔ツアーの時もやはり、同じ仙台Rensaでこの曲をやっていたので、
ちょっと、おぉーと思いました。
震災で延期になった仙台公演。
Ustreamで生中継もされました(エレカシ史上初。たぶん)。

宮:武道館の直後から曲を作り出しちゃってて。実は呆然としてたんですけどね、『悪魔のささやき』が区切りというか、区切りでスタートのアルバムだったから。
鹿:うん、そうですよね。じゃあ、そこで漠然としたものが形になる前に、震災がきたんですか?
宮:そう! 呆然としながら曲は作ってたの。他にやることないし、しっかり曲を作っていくっていうのは日常でしょ? だから、それをやってて。それでたまたま震災の時はなんかの撮影をしてたんですよ。ツアーパンフレットとかの撮影だよね。それで、大変長い時間揺れて。家に 辿り着くのに普通だと30~40分で着くとところを6~7時間かけて夜中に家に着いて。そういうのがあってツアーに行ったから、純度が――わりとそこで確信的にバンドをもう1回……俺はバンドでやるっていうことを確認できたのかも知れないですね。
※宮:宮本浩次、鹿:鹿野淳

(MUSICA VOL.56 2011年12月号)

このMUSICAは、シングル「ワインディングロード/東京からまんまで宇宙」リリース時のインタビューです。


※初回限定盤は悪魔ツアーのLIVEドキュメンタリー映像付き

2010年11月にアルバム『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』が発売され、
年が明け、新春武道館が終わり、4月から始まるツアー(4月2日が初日@新潟Lots)の直前、
東日本大震災が起きてしまった。
当時、予定していたイベントやライブを中止にするアーチストも多くいる中で、
エレカシのツアーは開催され、ただ仙台を含む東北3公演は延期という形になりました。

MUSICAの記事で鹿野さんは、
震災直後のツアーの中で、何を感じ取ったのかと宮本さんに問いかけます。

宮:まぁ、 いろいろ考えたんだけど。……それこそ、過去には足尾銅山鉱毒事件もあるし、おれは”ガストロンジャー”で《繁栄という名のテーマであった。》って、日常のテーマの中にそういうのを盛り込んでやってきたから。”ファイティングマン”もそうだし。だから今回の震災に対してことさらに、何かをやるのはどうしても恥ずかしくてできなかったとこもあるんだけど。(中略)
だから、意識して震災云々っていうのはないんだよ。でも曲に関しては、当然自分も震災から強烈な印象を得たわけだし――実際、東京ももの凄く揺れたからね。 その後のこととかって、まぁ、映像を通してだけど、相当な衝撃は受けてるわけで。当然、それで何も考えないわけではないから、そういう中では生身の人間としていろいろ考えるところがあって。それは当然、この歌詞の中により強く反映されてる。
ただ、同じことを僕はずっと歌ってると思う。《いつの日か輝くだろう/あふれる熱い涙》(“今宵の月のように”)、《oh ファイティングマン(yeah)正義を気取るのさ》(“ファイティングマン”)、《満たされないまま/引きずりまわして歩け》(“俺の道”)……なんでもいいんだけど、常にその視点っていうのは持ってたってことを強く思えたツアーだったんですよ。

(同上)

他にも、”化ケモノ青年”の《アノ19世紀以来 男の歴史とは 己のイメージと相克の歴史》や、
“漂う人の性”の
《夢から醒めし人よ 生まれたばかりの人/見渡す街の灯りは変わらなく見えても/昨日までとは違う よろこびに飢えた人/潜みしそのプライドに かけて歩み出せよ》
も引き合いにだし、宮本さんは、常に「その視点」でやってきたのだと語ります。

悪魔ツアーというのは、今まで行ったライブの中でも印象深い。
震災直後というタイミングがやっぱり大きかったのか……
3月後半あたり、ツアーやるかやらないか、公式発表を待つ日々がしばらくあったと思います。
予定通りイベントをやる人もいたけど、中止を決める人も本当に多かったので、
ほんとに一体どうなるんだろうと思いました。
結果的には開催されることになって、私も参加しましたが、
演奏される1曲1曲が染みました。まあ、エレカシの曲はいつも染みるんですけど(笑)、
この時の染み方は尋常じゃなかったというか……
もう響き方が以前と全然違うんです。
「悲しみの果て」、「東京の空」、「偶成」、「普通の日々」……
宮本さんが「常にその視点」という表現で言っているけれど、
エレカシがずっと歌ってきたこと、聴き手がずっと受け取ってきたことが、
そのツアーでは、より輪郭がくっきりと鮮やかに見えたし、
心の深いところにじわーっと入ってきて本当にやさしかった。

宮:どうもね、ヘソを曲げるもんだから、震災には直接関係ないって言い方をしちゃうんだけど。……常に思うのは、海だって砂浜がなくなっちゃってんのとか、俺、 ほんとに嫌なんだよ。でも昔から、開発とか、型にはまった自然保護運動だったりエコロジーだったりがあって……それで少しは収まるんだけどさ。それを僕は歌いたくないのよ。(中略)
別にそれをことさらに今だけ歌う……僕はそれができない男みたいで。だからみんな僕をもどかしく思っているんだけど、でも体質的に無理なんだよね。でも、鹿野さんはそこまで汲んでくれてるのがわかるから言いたいんだ。

(同上)

「でも体質的に無理なんだよね」という言葉がすごく印象的です。体質的に。

2011年の延期された仙台公演を、私はUstreamで見てたんですけど、
「旅の途中」が始まって、直感的に、これは仙台、東北のために捧げられた曲なんだろうなぁと思った。
めったにやらないレア曲ということもあったし、曲の内容からしても、
特別に歌い演奏された曲なんだろうと。
ほんとのところはわからないし完全に想像ですけど…
だけどこの「旅の途中」がほんとによかった。
この曲をここで選ぶエレカシはほんとにかっこよかったし、粋だなと思ったし、
あの時期に演奏されて、「旅の途中」という曲が、また違った輝き方をしていた気がします。
「旅の途中」(2011.6.3仙台Rensa)
http://youtu.be/0hhrgbZy3i8 ※リンク切れ

鹿野さんが、宮本さんは人を心の中で扇動する歌を歌ってきて、その歴史の中でいろんな浮き沈みがありつつも、ここまで来れた。新曲のジャケットの標識が「折り返し」なのは、続けていく中で終わらせない気持ちをすごく表していていいし、そして今回の2曲ともギターリフのはっきりした、ロックバンド然とした曲なのが本当にいい、という感じでシングルについて絶賛すると、

宮:…………………(じっと睨む)
鹿:え? 全然違った?
宮:いやぁ~ありがとう。いつも本当にありがとうございます。……で俺、どうしたらいいんだろう? いいよね? 素朴なままでいいよね?
鹿:うん。
宮:ことさらに何かを強調してとか、世の中の流れに乗ってとかそういうの……ね?
鹿:人が作ったメインストリームのドラマに沿っていかなくってもって?
宮:そう。そういうのを売りにするっていうかさ。せいぜい30年間不動のメンバーぐらいが売りかなと思ってるんだけど。
鹿:(笑)。
宮:でもこんなことはテレビでは一切言いたくなかったし。でも、鹿野さんと話してると、どうしても歌詞や本質的な話になってくると、言わざるを得なくなったから話したんですけど………すみませんね、いつも俺は面倒で。

(同上)

「素朴なままでいいよね?」という言葉がもうなんとも……ぐっとくるというかなんというか。

何がかっこよくて何をもって「恥」とするのか。
エレカシのこういった透徹した美学。
時として時代や世間とせめぎ合うものなのかもしれないけど、
でもエレカシのことを好きなのは
きっとこういうところだと思うし、
生み出される表現の大事な根っこの部分でもあるのだろうという気もします。

9月に仙台に行った時に流れで、駅から海岸寄りの、
若林区のあたりを少し歩きました。
立ち並んだ工場。まっすぐに伸びるアスファルトの道路。
あの日はからっと晴れて、青空が本当に気持ちよかった。

さわやかな秋風にあたりながら、あれから3年あまりが経ったんだなあ、とふと思った。
今眺める町の景色はとても穏やかだけど、
その間にはきっと計り知れないいろんなことがあって、
きっと今もいろんなことがあるのだろうなぁと思った。

ことし9月23日の、仙台Rensaの「旅の途中」を今でも思い出します。
「珍奇男」のあと、たしか前置きもなく何も言わず曲が始まった。
バンドで一斉に入る厚みのあるイントロ。
ギターのコードをジャーンと鳴らす時の、
ネックを握る手元に視線を落とす、
少し左下に傾げた宮本さんの表情。
淡々としたおだやかな面持ちの中に、
「旅の途中」に込めた思いが静かに、でも熱く伝わってくるような気がしました。

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POSTED COMMENT

  1. nt より:

    読んでいて泣いてしまいました。素朴なままでいいよねって言葉に!
    あのバブルで浮かれまくっていたころに「浮世の夢」とか作ってますものね。
    とにかくぶれてない。一貫した美学があるのでしょうね。
    そして生きる事へのひたむきさ 無骨だけどユーモアもあって 本当に愛すべきバンドですね。

  2. 侘助 より:

    ntさん、こんばんは!
    「素朴なままでいいよね」、ほんとにこうくるものがありますよね
    この話の流れで「素朴」という言葉を選ぶのが……なんだかとってもいいなと思いました。
    「浮世の夢」、ほんとそうなんですよね。あんな浮かれまくっていたご時世に。
    ほんとすごいです
    無骨だけどユーモア……そうそうほんとにそうです。
    ぶれないかっこよさとユーモアのバランスが絶妙ですばらしいと思います。
    いいバンドですねえ(しみじみ)

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