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2014.6.14 王様のブランチ(読書LOVERS)

本屋のはしご

宮本浩次:本屋のはしごをするのが好きなんですよ! で、東京だと池袋にも大きな本屋さんあるし、新宿にも神保町にもいろんなところに大きな本屋さんあって。
おんなじ本売ってるのに、3回はしごする。挙句プラス、古本屋さんにも行く。それでツアーに行くと、また本屋のはしごをするんですよ。だから、九州でも東京でも売ってるものは同じものだと思うんだけど、それでもやっぱ古本屋さんなんか行くと発見があるんですよ。本屋に行くと……よっぽど好きですね、やっぱり。自分で言ってて今思いますけど。

2014.6.14 王様のブランチ

「王様のブランチ」は毎回、冒頭に本のコーナーがあって、
この「読書LOVERS」というコーナーは、わりと最近できたのかな?
まさかこれにエレカシが登場するとは……
今回いろいろプロモで出てますけど、中でもこれは楽しみにしてました。
本が周りにあると安心するんですねえ。

「吾輩は猫である」

宮:「吾輩は猫である」という本なんですけど。すっげえ面白かったんだよね。すごい人っていうのは、やっぱぶっ飛んでんなあ、って。だって猫を……(文庫を手にしながら)≪吾輩は猫である。名前はまだ無い。≫って言ってんだもん。すっげぇなあ!って思いますね。
――冒頭の一文、結構インパクトが。
宮:はい。もう、冒頭。突き抜けてますね。やっぱ、さすがですね。はい。

宮:10回以上読んでんじゃないかなあ、俺、これ。かわいいんだよね、猫が。何しろ猫が散歩してて、3羽カラスがとまってて、「おい、どけ!」と。家の塀の周りをこう……(右手が猫役となり、塀の上を再現)で、カラス(左手)がこうやってやったら(左手の向きを変える)、驚いて猫が落っこっちゃったっていうとこが、僕、好きで、もうねえ……

2014.6.14 王様のブランチ

少し読み返してみると、宮本さんが言っているカラスとのシーンは、第七話。
吾輩(猫)は運動を始めようと思い立ち、
庭の竹垣の上を落ちないように歩いて一周するという「垣巡り」を始める。
たまに失敗もするけど、やるたびにうまくなるし、うまくなると面白い。
ところがある日、吾輩の前に3羽のカラスが現れて……

人の運動の妨をする、ことにどこの烏だか籍もない分在で、人の塀へとまるという法があるもんかと思ったから、通るんだおい除(の)きたまえと声をかけた。真先の烏はこっちを見てにやにや笑っている。次のは主人の庭を眺めている。三羽目は嘴(くちばし)を垣根の竹で拭いている。何か食って来たに違ない。吾輩は返答を待つために、彼等に三分間の猶予を与えて、垣の上に立っていた。烏は通称を勘左衛門と云うそうだが、なるほど勘左衛門だ。吾輩がいくら待ってても挨拶もしなければ、飛びもしない。吾輩は仕方がないから、そろそろ歩き出した。すると真先の勘左衛門がちょいと羽を広げた。やっと吾輩の威光に恐れて逃げるなと思ったら、右向から左向に姿勢をかえただけである。この野郎!

(夏目漱石「吾輩は猫である」より)

ふてぶてしいカラスたちを前に、どうやり過ごそうか考えあぐねた吾輩は、
結局、退却が身のためだろうと思ったその矢先に、

左向をした烏が阿呆と云った。次のも真似をして阿呆と云った。最後の奴は御鄭寧(ごていねい)にも阿呆阿呆と二声叫んだ。いかに温厚なる吾輩でもこれは看過出来ない。

(同上)

のん気なカラスの「あほう」という鳴き声にブチ切れた吾輩先生、
今にも飛びかかって行きたいのに、垣の幅が狭すぎてのそのそとしか進めない。

ようやくの事先鋒を去る事約五六寸の距離まで来てもう一息だと思うと、勘左衛門は申し合せたように、いきなり羽搏(はばたき)をして一二尺飛び上がった。その風が突然余の顔を吹いた時、はっと思ったら、つい踏み外ずして、すとんと落ちた。これはしくじったと垣根の下から見上げると、三羽共元の所にとまって上から嘴を揃えて吾輩の顔を見下している。図太い奴だ。睨めつけてやったが一向利かない。背を丸くして、少々唸ったが、ますます駄目だ。

(同上)

単行本の「東京の空」にも、ここ(「のきたまえ」のところ)が引きあいに出されている部分がありました。
ちょっと読み返しただけだけど、
ほんとに“ぶっ飛んで”て、吾輩が“運動”だと言ってカマキリを獲ったりセミを捕まえたり、
でもちょっと運動としては物足りなくて、
ようやくいい塩梅だとやり始めた「垣巡り」だったのに、
カラスに「阿呆」と鳴かれてプライドが傷つき、
挙句、塀から落っこち、それでも頭上のカラスを睨みつけている。
なんかこう、じわじわきます。ひたひた迫る絶妙な笑いも含め……
エレカシの世界観のある部分と通底しているような感じもするし。

カラスと言えば、「町を見下ろす丘」。そして“雨の日に…”。
雨が降って、歌の中の≪僕≫はうつうつしてるし道に迷ったりするんだけど、
≪カラスが一羽「アホウ」とないて飛んだ≫
とカラスが登場するんですよね。

タイヤの猫

宮:駐車場で一番笑ったのが、タイヤの(両手で円を描く仕草)、こういう円いところがあるじゃないですか。冬の寒い時に、(椅子から立ち上がり)こうやってお腹つけてましたから(と自ら猫になり腰をかがめ腕を伸ばす格好)
――猫がですか?!
宮:猫が、駐車場の、外の車のタイヤのところでこうやって(全身で猫になる)。あれ多分……すごく平べったくなってこうやってね(再び猫になる)。ちょっとびっくりしましたよね。
――かわいいですね!
宮:そうなんです、かわいいんです、猫って(笑)。もういろんなことしてて(ようやく着席)

2014.6.14 王様のブランチ

出た。宮本さんの小動物話。
「僕らの音楽」で川上未映子さんと対談したときも、川上さんを猫に例えて、
大猫でも子猫でもない、中猫だ、と言って、
猫になりきり背中を丸めて両手をグーしていたのを思い出します。

「1960年代の東京」

宮:「1960年代の東京」。立ち読みはしてて、買うところまでいかなかったんですけど、ようやく1週間くらい前に買いました。
(中略)
宮:合唱団に行ってましたから、僕は。(中略)渋谷とか懐かしいんだ、意外にこう見えて。
――へえ。
宮:渋谷の駅前にパチンコ屋とかあったからね。
――そのパチンコ屋は印象に残るほど結構強烈に……
宮:そう、印象が残って。夢みたいなね。夢のようなですね……なんで、昔こうだったっていうの見てるとグッくるのかよくわかんないんだけど。だから浮世絵とかもそうで(ページを次々めくりつつ)、江戸時代こうだったみたいなのがね、結構グッとくるんですよ。

2014.6.14 王様のブランチ

「昔こうだったっていうの見てるとグッくる」んだそうです。
ここはもう、“武蔵野”が流れてきちゃいます。
うつむいて、ページをめくる姿が印象的だったです。

「Destiny」

ナレ:そして今週発売されたニューシングル「Destiny」に込めた思いをうかがいました。

宮:いろんな愛があるけれども、すごくこう生きてるっていう「ヒューマンなラブソング」にしてほしいっていうことをすごく、お題っていうか、もらって。≪あなたに会いたい気持ちだけでよかった≫っていうサビの一番絶叫するとこなんだけど、そこの言葉ができて。まずそこまでできた時に、みんなにこれきっと喜んでもらえるんじゃないかなぁ、っていう風には思いました。

2014.6.14 王様のブランチ

短かい時間でしたが、非常にてんこもりの「読書LOVERS」でした。
突然猫になったり、写真集にしみじみしたり、
宮本さんの本の話はほんとに、何度きいても楽しいです。

夏目漱石「吾輩は猫である」新潮文庫

松山巖 (解説), 池田信 (写真)「1960年代の東京 路面電車が走る水の都の記憶」毎日新聞社

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POSTED COMMENT

  1. suisui より:

    こんにちは。
    楽しいコーナーでしたね♪
    猫のすごく平べったくなったところの実演もあり^^。
    自分の好きなものについて語る宮本さんの話は、楽しくて大好きです。
    「吾輩は猫である」昔途中で挫折したので、また読んでみようかなと思ったりしています。

  2. 侘助 より:

    suisuiさん、こんにちは!
    ほんと、楽しい本のコーナーで、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
    猫の実演は、ほんとにねぇ……何度もじっくりやってましたね^^
    おっしゃるとおり、好きなものについて語る宮本さんは
    ほんとに楽しそうで、ついつい引き込まれますね。
    「かく語りき」シリーズもそういう意味ですばらしいです。
    私も、この機会に「吾輩は猫である」読み直してみようと思ってます!

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